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ふぞろいな「王様」 宮崎市の「佐土原ナス」

 Uploaded by 朝日新聞社 ふぞろいな「王様」 宮崎市の「佐土原ナス」 (2018/08/01)

ふぞろいな「王様」 宮崎市の「佐土原ナス」

光沢を帯びた紫のボディーが、葉の隙間から存在感を放っていた。見慣れた姿より赤みがかっていて、少し大ぶり。宮崎市の田園地帯にあるハウス。佐土原ナスは6~8月が収穫のピークだ。佐土原ナスはかつて、「ふぞろい」が原因で誰もつくらなくなった過去がある。
 江戸時代、薩摩藩の支藩だった佐土原藩(現・宮崎市)で盛んに栽培され、この名前がついた。宮崎県では、戦前までナスと言えば「佐土原」で、その名は全国に知られていた。
 戦後。野菜の品種改良が進み、色形がよく収量も安定したナスが全国に普及する。佐土原ナスは次第に減り、1980年ごろには食卓から姿を消した。88年、地元の種苗業者が、商品にならなくなった種を「保存のため」と、県総合農業試験場に持ち込んだ。種は冷蔵庫に入れられ、のちに世間が「伝統野菜」に目を向けるようになるまでの12年間、眠ることになる。
 再び取り出された種から収穫したナスは、その味で人々を魅了した。「懐かしいナス本来の味」、若い世代は「とろとろして甘く、初めて食べる味」と。
 この味にほれ込んだ農家8人が05年、研究会を立ち上げた。1本の苗からの収量は一般のナスの半分ほど。ふぞろいで売り物にならないこともあるなか、採算度外視で味の追求を続けている。16年には、13人で106トンを生産する。地元のスーパーに並び、飲食店メニューの「常連」になるまで、復活を遂げた。
 そのままの味が楽しめる「焼きナス」が定番の食べ方だ。宮崎市内の居酒屋「盃二(はいじ)」で頂くと、口にいれた瞬間のとろっとした食感と、みずみずしさに驚いた。えぐみはなく、ほのかな甘さが広がった。店主の小川慎吾さんは「『焼きナスの王様』って呼ばれている。焼酎のアテに最高。これを食べると他のナスが食べられなくなるのが悩みですね」。




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