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iPSの網膜「順調」 世界初移植から5年、女性の患者

 Uploaded by 朝日新聞社
iPSの網膜「順調」 世界初移植から5年、女性の患者
2020/05/15 公開
2014年に世界で初めてiPS細胞からつくった細胞を移植する手術を執刀した神戸アイセンター病院の栗本康夫院長が朝日新聞の取材に応じ、手術した女性の術後5年の経過について明かした。移植した網膜の細胞はその場で一定の機能を果たしており、栗本院長は「順調に経過している」と話した。

 移植したのは根本的な治療法がない目の難病「加齢黄斑変性」の患者で、現在は80代。この病気は、光を感じる視細胞に栄養を送る網膜色素上皮細胞が傷む病気で、失明のおそれもある。症状の進行を抑える注射薬があるが、目に直接注射するために精神的な負担がある。

 理化学研究所などの研究チームは14年9月、iPS細胞からつくった細胞を患者に移植した。患者の皮膚の細胞からiPS細胞をつくり、網膜色素上皮細胞に変えて女性の右目に移植した。

 移植の際、ほかの細胞に変化しきれていない未分化のiPS細胞や目的外の細胞が混じると、がん化する危険性もある。臨床研究では安全性の確認を主な目的とした。栗本院長によると、移植後5年経っても、細胞はがん化せず、移植した細胞はその場にとどまっている。

 また、効果についても調べている。

 移植するまでに治療薬を計13回注射することで視力を維持していたが、移植後は注射なしで視力を維持できている。移植したところ以外の視細胞は失われているが、移植したところの視細胞は残っている。さらに、移植した細胞の下の層にある毛細血管も他の部位より減っていないことを確認している。

 ただし、栗本院長は「まだ、100万円、200万円でできるような治療ではなく、費用が高い。この女性と同じような方法でたくさんの患者に保険適用するのは難しい」と話す。この女性の手術は病気の原因になっている血管を取り除いてから細胞を入れたが、出血のリスクもあり、手術の難易度も上がる。そのため、この病気には、細胞を注入するだけの簡易な方法の開発も進んでいる。

 術後5年の状況については、3月の日本再生医療学会総会で発表される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で見送られた。





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